about

三重県菰野町、鈴鹿山脈のふもとの町に漆の器の店「おわんのささうら」を開きました。お椀やどんぶり、お箸や弁当箱など商品はすべて木地の段階から漆塗りまで一貫して手作業で製作しています。お椀などの挽き物は自ら手作りした刃物と古来から伝わる和式手引きろくろを使いひとつひとつ削り出してゆきます。曲げわっぱの弁当箱は尾鷲ヒノキを使い、曲げわっぱの伝統技術により形を作ってゆきます。漆塗りにはいくつかの技法があります。木目を生かした「拭き漆」、刷毛を使った「真塗り」麻布を張って器を守る「本堅地仕上げ」など日々、さまざまな仕上げ方を試み製作しています。表からは見えない下地作業も次の世代へと大切に伝えてゆきたいと思います。

 

お椀を挽く

木を和式轆轤で挽く職人を昔から木地師といいます。西洋の旋盤と違うところは、刃物を自分で作り、木に合わせた挽き方をすることだと思います。型を使って同じものを作っていきますが、作る人が違うと同じ型を使っても、仕上がった雰囲気が変わってきます。木の塊を削っていくわけですが、お椀となる木の箇所はわずかで、ほとんどがカンナ屑となっていきます。職人の仕事は、いかに早く丁寧な器を作り上げることと、木に心をどれくらい寄せることが出来るのかが大切だと思います。今の時代は、旋盤からNCフライス盤といった自動切削機で削って行きますが、改めて手仕事とは何かと考えさせられます。職人から受け継いだ技術を磨き、お椀は木地師のように挽いて行きたいと思います。

 

曲げる

曲げわっぱは、主に杉、ひのきを使って作られます。一般によく知られる楕円形のお弁当箱と挽き曲げ技法を使った長方形のお弁当箱です。挽き曲げ技法とは角になる部分をのこぎりで細かく線挽きをして薄くします。お湯に浸して角を曲げていきます。のこぎり目を入れることにより直角に曲がり四角形の形が可能になります。白木のお弁当箱は、扱いが難しいので漆で保護をしようと思いました。様々なお弁当箱を作っていきたいです。

 

漆をつける

お椀の仕上げ方には、大きく分けて3種類あります。下地をせずに刷毛で漆を塗り重ねて仕上げる方法。下地(珪藻土を焼いて作る地の粉+米のりまたは砥の粉+漆)を付けてから漆をぬっていくもの。お椀に麻布を貼った後、下地付けをしていくものとあります。漆の塗り重ねや下地付けの回数で強度も変わってきます。ほとんど世の中に出回る漆器は、目に見えてこない下地を経済的な理由で簡単に仕上げています。長年使って頂くことを考えると麻布を縁、足、内側の底に補強した昔ながらの本堅地仕上げが、丈夫で私は良いと思います。下地職人に弟子入りして毎日お椀の下地付けをこなしました。檜のヘラを形に合わして、微妙な硬さに仕上げるのが仕事の始まりです。地付けの仕方、漆の配合などは職人によって様々です。丈夫で強い漆器を目指し伝統技術を繋げ伝えていきたいと思います。

 

漆を塗る

漆塗りのお椀は基本的に、下塗り、中塗り、上塗りと塗っていきます。塗りの中で最も難しいとされる真塗りと呼ばれる仕上げ方は、お椀の品格を決めます。適度な厚み、塗りむらを無くし、漆の状態、天候の事を考え、刷毛の種類、乾かすスピードを調整していきます。5分おきにお椀の上下を入れ替え均等に一日かけて乾かして仕上げます。真塗りのお椀を持った時の柔らかさ、口に触れた時の感触は漆の特徴をよくあらわしてくれます。

 

profile

作り手 笹浦裕一朗

1978 三重県四日市に生まれる
2002   石川県挽き物轆轤技術研修所に入所
2003   高岡クラフト出品「金賞」受賞
2004   伝統工芸展作家の畠中重民氏に乾漆を学ぶ
2006   下地職人の田中育太郎氏に弟子入り
2007   人間国宝の村山明氏に刳り物を学ぶ
2009   三重県四日市に戻り独立。
2012    茶懐石料理、茶事を大阪で学ぶ
2017  「繋げよう、伝えよう、お味噌汁の会」を発足
2018    三重県四日市に工房併設ギャラリーを構える
2019 NewYork 三ツ星の店 Masaの器を制作
2021    うるしのお椀の店、おわんのささうらをopen